月下美人(ゲッカビジン)の育て方をご紹介。夜に咲き、一晩で花を閉じる月下美人。甘美で濃厚な香りの花をつけることでも知られています。神秘的でミステリアスな美しさを持つ月下美人には愛好家も多く、一度はまったら抜け出せなくなるほどの魅力がつまった植物だといわれています。
月下美人(ゲッカビジン)の基本情報
月下美人(ゲッカビジン)の原産地は、メキシコから中米の熱帯雨林地帯。サボテン科クジャクサボテン属の多肉植物のひとつです。平たく細長い葉を持ち、自生地では他の樹木に着生して育ちます。
月下美人の花は、香りが強いことが特徴。漂い始める香りで開花がわかることから、月来香(ゲツライコウ)という別名を持っています。香りは甘くジャスミンに似ており、海外では香水としても利用されています。花は食材にもなり、揚げ物や酢の物、スープの具材などに使われることもあるようです。
月下美人は、生長すると3mほどに育ちます。花がつく目安は、株が1m以上になってから。自立しにくいため、あんどん型の支柱で支えながらバランスよく育てるのが一般的です。
月下美人は丈だけでなく花も大きいです。直径20cm前後の白い花を咲かせます。開花時期は7~11月頃。夕方につぼみから香りを漂わせ、20時前後に花を開きます。夜明けを待つことなく、午前3~4時にはしぼんでしまいます。
夜に花をつける理由は、コウモリを呼び寄せるべく進化したためだといわれています。花が白いのは暗闇でも目立つため。コウモリは、花粉を運んでくれる役割を持ち、子孫繁栄に欠かせない存在だからです。
月下美人(ゲッカビジン)の花言葉
月下美人という名前は、花が夜に咲き始め、翌朝までにしぼんでしまうことに由来します。花言葉はいずれも、この特徴的な花にちなんだ言葉がつけられています。
・「はかない美」「はかない恋」 …一夜かぎりの花であることに由来
・「あでやかな美人」 …妖艶な美女を思わせる花姿に由来
・「秘めた情熱」 …短時間で、精いっぱい咲き誇る力強さに由来
月下美人の英名は、『Queen of the night(夜の女王)』です。
香りに由来した「dangerous pleasure(危険な快楽)」という花言葉がつけられています。
月下美人(ゲッカビジン)にまつわる逸話
夜にだけ咲く月下美人には、神秘的な逸話がいくつか伝えられています。
・年に一度しか咲かない
・満月・新月の夜に咲く
・毎年同じ日に咲く
ロマンチックさを覚える逸話の数々ですが、残念ながらこれらは本当ではないようです。
月下美人の開花は、年に3回前後。満月や新月以外の夜でも、花を咲かせます。毎年同じ環境で育てていれば開花の時期は似通ってきますが、同じ日でなくても花を咲かせることがあります。
いずれも科学的根拠がなく、俗説として伝わっています。
ですが、例えファンタジーであってもそう信じたくなるような、神秘的で不思議な魅力が月下美人にあることは事実だといえそうです。
月下美人の育て方
苗から育てる
月下美人は、苗から育てるのが一般的です。タネはあまり流通していないのに加え、育てるのにも時間を要します。株を選ぶときは、葉にハリがあり傷んでいないもの、株がしっかりしているものを選びましょう。
日当たりと環境
基本的に、日当たりの良い環境でよく育ちます。日照不足になると生長が進まず、花付きが悪くなる可能性があります。月下美人は、季節に応じて置き場所を移せるよう、鉢植えで育ててあげるようにしましょう。
【おすすめの置き場所】
- 春・秋 …半日陰
- 夏 …明るい日陰
- 冬 …室内
直射日光を避けるため、真夏は遮光ネットなどで日当たりを調整します。
寒さには弱いので、秋になったら室内へ移してあげましょう。冬越しには、最低10℃キープ出来る場所に置くのが安心です。
水やり
月下美人は、多肉植物ですが水分を好む植物です。
春~秋の生長期は、土の表面が乾いたタイミングで水をあげるようにしましょう。量はたっぷり、鉢底から水が染みだすくらいが目安です。
晩秋~冬は休眠期。水やりは、土を湿らす程度の量で大丈夫です。頻度は月に約2~3回を目安にあげるようにしましょう。
通年、多湿による根腐れに注意しましょう。茎や節にシワが寄ってきたら、根腐れしている可能性があります。水やりを控えてしばらく様子を見ましょう。変わらず葉がしなびるようであれば、1度株を鉢から抜き、腐った根を取り除いた後、新しい土に植え直しましょう。
肥料
生長期は、土に置く緩効性肥料を月に1回程度あげましょう。暑さが落ち着く10月頃には、2週間に1回程、液体肥料をあげるようにしてください。
手入れと植え替え
苗から育て、開花する大きさまで育てるには、年単位で時間がかかります。1~2年に1回のペースで大きい鉢に植え替えてあげるようにしましょう。葉が広がるとバランスが崩れやすくなるため、アジサイやアサガオの栽培で使われる、あんどん支柱を立てて支えます。丈が大きくなるごとに、支柱のサイズも上げるようにすると安定して育てられます。
植え替え時には、古い根を半分程度切り戻し、新しい土に植え替えるようにしましょう。再び根がはるまでの1ヶ月程度は、風通しのいい日陰で様子を見ます。
剪定
月下美人の根元からは、シュートと呼ばれる棒状の茎が伸びます。シュートが伸びてきたら、先端の方を指で摘み、切り取りましょう。芽を出す力が弱まってしまうため、シュートは付け根から切り落とさず、古いものも残しておくようにしましょう。
まとめ
月下美人は、多肉植物の中では、やや手間がかかり、上級向きといえるかもしれません。ただ手間暇をかけて育てた株に花がついたら、それだけですべて報われてしまうくらい嬉しくなること間違いなしです。
一晩だけ咲く艶やかな花を、ぜひご自宅で育ててみてください。