花の少ない冬の時期に、明るい彩りを添えてくれるシクラメンの花。名前はよく知られているにも関わらず、育てたことがある方は少ないのかもしれません。一般的に、シクラメンは育てるのが難しいといわれていますが、なぜなのでしょうか。シクラメンの特徴とポイントを知っておくだけで、ハードルはかなり下がりますよ。
シクラメンの基本情報
シクラメンは、サクラソウ科に属する球根植物です。原産地は地中海沿岸地域。開花は品種によって異なりますが、秋~春にかけて咲くものが多く流通しています。
球根は、平たくつぶしたタマネギのような、独特の形をしています。球根の特徴にちなんで「ブタノマンジュウ(豚の饅頭)」、花びらが上向きに咲きそろう様から、「カガリビバナ(篝火花)」という和名を持っています。
野生種とも呼ばれる原種は、スミレの咲き姿に似た、一重咲きの花をつけます。原種を元に改良された園芸品種は多数あり、八重咲きや万重咲き、フリンジ状の花びらをつけるものなど、咲き方のバリエーションも豊富。シンプルで清楚に咲く原種、大ぶりで華やかな園芸品種、どちらも魅力的です。
花言葉
シクラメンの花言葉は、「遠慮」「内気」「はにかみ」。シクラメンは、雨や露から花芯を守るため、下を向くようにして咲きます。控えめな様子を表す花言葉は、この花の咲き姿に由来するといわれています。
なぜシクラメンは育てるのが難しい?
一般的に、観葉植物は春~秋に生長期を迎え、気温の下がる冬には休眠します。冬に咲くシクラメンはその逆。気温の高い季節に休み、冬場に向けて開花準備を始める植物です。そのため、育てる側にとって感覚がややつかみにくい植物だといえます。
シクラメンが一番生育しやすく、花が咲きやすい気温は、15℃前後。25℃以上になると、夏がくるものと察知し、ついている葉を落として体力を温存しようとします。生長するための自然な反応が、枯れたようにも見えてしまうのです。
手元にあるシクラメンの開花時期がいつで、どういう特徴があるのか。これらを知っておくだけでも、あまり心配し過ぎず、生長を見守ることが出来ます。鉢植えに挿してある小さなプレートにも最低限の情報が罹れているので、取っておいて参考にするのもおすすめです。
育て方のポイント
水やり
シクラメンは、高温多湿の環境が苦手です。土は乾かし気味に育てることを心がけましょう。頻繁な水やりは株を弱らせる要因になります。水をあげるときには、球根に水がかからないよう、葉をめくって株元の土に与えましょう。
鉢底に受け皿が付いているタイプの鉢では、底にためた水を吸水して生長します。深さの2/3ぐらいを目安に水を入れ、減り具合を見ながら水を足してください。鉢土が完全に乾くと水を吸収しにくくなるため、注意が必要です。
置き場所
明るく風通しのいい、日の当たる場所を好みます。シクラメンの大半は温室育ち。極端な寒さは苦手なため、あたたかい室内で育ててあげましょう。
秋~春の間は、明るい窓辺で育てるのがおすすめです。1日に最低でも3時間前後は光に当たる場所に置くとよく育ちます。
花の手入れ
シクラメンの花は、種類にもよりますが11~4月くらいまでが開花時期です。咲いた花がしおれたら、こまめに摘み取るようにしましょう。茎の根元から、ねじりながら引き抜くようにすると傷みにくいです。咲き終わった花がらを摘み取ることで、次の花が咲きやすくなります。花同様、葉が黄色く枯れたら株元から摘むようにしましょう。
休眠準備と夏越し
5月以降は花の数が減り、梅雨の時期には葉や茎が枯れます。気温が高くなるにつれて花が減り、葉や茎の変色が目立ち始めたら、休眠に入ろうとしているサインです。花が終わったら徐々に水やりを減らし、土を完全に乾かすようにします。葉や茎は、根元からねじって摘み取りましょう。
葉や茎が無くなり、乾いた土に球根だけが植えられている状態になったら休眠準備は完了です。夏を越すまでは、水やりや肥料は一切控え、風通しのいい明るい日陰で管理しましょう。屋外に置く場合、雨のかからない場所、直射日光に当たらない場所に置いてあげてください。
休眠明けの管理
夏を無事に越した球根は、9~10月にかけて葉を出します。新しい土に植え替えて、次の開花に向けて準備をしてあげましょう。土は、市販のシクラメン専用土が便利です。
元の鉢から球根を取り出し、土を優しく払い落します。伸びた根は半分程度に切り詰め、新しい土を入れた鉢に植え付けをしましょう。球根は、土から1/3程出た状態で植え付けます。
葉組み
シクラメンは葉1枚ごとに花がつきます。球根の上部に日光を浴びることで花がつきやすくなります。ですが、葉が茂っているとなかなか内部まで光が届きません。「葉組み(はぐみ)」を施して、日が当たりやすいようにしてあげましょう。風通しがよくなるので、生長しやすい環境に整います。
販売されている鉢花は、花が中央に寄り集まるようにして咲いていますが、これも葉組みの結果です。葉組みをする際は、市販の鉢を思い浮かべてやってみましょう。
つぼみがつきはじめたら、茂った上の葉を下葉に引っ掛けるようにして葉を組み替えます。つぼみの付いた花茎がすべて中央に寄るように、バランスを見ながら整えましょう。葉組みの後は、つぼみが傷まないよう日光を避け、2日程日陰に置いてから元の日当たりに戻してあげてください。
まとめ
シクラメンの原産地は、風通しがよく、乾燥した土壌。日本と大きく異なるのは、夏の高温多湿です。シクラメンは、夏を上手に越すことで、何度も花を楽しむことが出来る植物です。
これから、きれいなシクラメンがたくさん出回る季節です。ぜひ、お気に入りのひと鉢を見つけてチャレンジしてみてください。