植木鉢の種類の1つ、「スリット鉢」をご存知ですか?名前の通り、鉢本体にスリットが入っている鉢を指します。スリット、つまり隙間がある植木鉢。いったいどんな用途があるのでしょうか。
スリット鉢とは?
スリット鉢は、その特徴的なデザインが名前になった植木鉢です。鉢底からサイドに、複数のスリットが入っています。主にプラスチック製で、一般的な丸い鉢の他、四角形や六角形、八角形など、形もさまざま。カラーやサイズ展開も豊富です。元々は日本で考案された植木鉢ですが、現在は世界で多く使用されています。
なぜ鉢にスリットがあるの?
植木鉢の中で長く育った植物は、生長した分だけ根も長く張っています。植物は鉢の側面を這うようにして根を伸ばし、底の方でぐるりと円を描きながら伸び続けていくのです。この、根がぐるぐると渦を巻くように育つことを「サークリング」と呼びます。
本来、植物の根は、下へ下へと真っすぐ張っていくのが自然な状態です。ですが、鉢の内部はスペースが有限なため、底にたどり着いた根は行き場がなくなり、底でサークリングをしてしまうのです。長期間に渡ってサークリングの状態を放っておくと、水分が吸収しにくくなり、生長の妨げや根腐れの原因につながります。
スリット鉢は、サイドに切れ目が入っていることで、鉢の内部に光が入りやすくなります。光を感じることで根は生長を止めるため、サークリングしにくくなる効果があります。結果、太い根から脇根が出やすくなり、効率よく根を張ることが出来るようになります。
スリット鉢は、植物が本来の自然な姿で生長しやすくなるよう考えてデザインされた鉢なのです。
スリット鉢のメリット
根を張りやすくする以外に、スリット鉢にはまだまだメリットがあります。
水はけ・通気性がいい
サイドに隙間があることで、水はけがよくなります。余分な水分を逃がすことで、通気性も確保できるため、根腐れを起こしにくい環境になります。スリット鉢は根の生長を妨げないだけでなく、酸素が行きわたりやすくなるため、植物は健康で丈夫な株に育ちます。
鉢底石が不要
通常、植木鉢の底には鉢底石を入れ、通気性と排水性を確保します。スリット鉢の場合、既にそれらが確保できているため、鉢底石がいらないのです。むしろ、鉢底石を入れるとスリット部分をふさぐ事になり、サークリングを招いてしまいます。
鉢底石を準備する必要がないため、植え替えの際の手間が減るのもメリットのひとつです。
軽量・安価
スリット鉢は、元は多くの苗を育てる必要のある生産者向けに作られた鉢でした。形も、指をかけて持ちやすいように工夫されているものが多いです。スリット鉢は大量生産が可能なつくりとなっている上、価格がリーズナブルな傾向にあります。素材がプラスチック製のため、とても軽くて負担にもなりにくいです。
植え替えの頻度が減る
観葉植物は、根詰まりを防ぐため、1~2年に1度は植え替えすることが推奨されています。スリット鉢の場合は、根が不用意に伸びすぎることがないため、根詰まりがしにくくなります。そのため、植え替えの頻度が抑えられるのです。長く育てていく場合、植え替えは必要ですが、頻繁にしなくていいのは助かりますね。
スリット鉢のデメリット
土が漏れる
隙間が開いている分、粒子の細かい土が外に漏れやすくなります。屋外で育てる場合にはさほど気にならないかもしれませんが、室内で育てる予定であれば、少し植え方を工夫してみるのもひとつです。スリットにかかるところまでは荒めの土を入れ、スリットより上に培養土を入れて分化することで、土の漏れは気にならなくなります。
デザイン性
機能性は高いものの、デザイン性の幅がないのがスリット鉢です。見た目でプラスチック製だとわかる上、テラコッタのように凝ったデザインのものはないため、インテリアとして鉢を楽しみたい方には物足りないかもしれません。
素材感を隠すために鉢カバーを使うのは、スリット鉢の機能性がなくなるため避けましょう。ただ、スリットが目立ちにくいデザインのものはあるので、検討の余地ありです。
軽すぎる
鉢植えは、土台の鉢に重さがあることで安定感が出ます。スリット鉢の場合は、鉢本体が軽量すぎることで、倒れやすくなる可能性があります。鉢は、植える植物に合わせて選び、バランスが取れるものを使いましょう。背の高い植物は、上側が重くなります。鉢は深く、底が広めの方が安心です。
屋外で育てる場合は、強風にも注意が必要です。風であおられて鉢が倒れないよう、フェンス等に固定するのもおすすめです。
まとめ
スリット鉢が持つ、意外な機能性には驚きです。次の植え替えのタイミングで、スリット鉢を使ってみてはいかがでしょうか。根腐れは、植物が枯れる大きな要因ですが、スリット鉢を使うだけで、根腐れを簡単に防ぐことが出来ます。水やりの失敗を気にしなくていいところも心強いポイントです。