『オーキッド(orchid=洋ラン)』の名前を持つ観葉植物をご存知でしょうか。ランの仲間でありながら、鑑賞価値が高いのは花より葉。光を受けてきらきら輝く葉が特徴的で希少性が高く、コレクターも多い植物です。不思議な葉を持つジュエルオーキッド、その生態と育て方についてご紹介していきます。
基本情報
ジュエルオーキッドは、ラン科の常緑性多年草。東南アジアなどの熱帯~亜熱帯の森林などに約1500種が原生しています。高温多湿を好み、日差しや寒さに弱い性質を持ちます。コチョウランやカトレアなどと同じランの仲間ですが、花よりも葉を鑑賞する植物として分類されています。
ジュエルオーキッドの最大の特徴は、光を受けて輝く葉脈です。はりめぐらされた葉脈は、光を受けて乱反射することで、光る糸で刺繍を施したような美しい模様を葉に描きます。暗く鬱蒼とした森林の中で、きらりと光るジュエルオーキッドは、「宝石蘭」「森の宝石」とも呼ばれています。日本でもその歴史は古く、江戸時代中後期くらいから、観賞用の葉を持つ植物として知られていたようです。
なぜ葉が光るのか。その理由は、花粉を媒介する虫を呼び寄せるため、光合成を効率よく行うため、などさまざまな説が唱えられています。
希少価値の高さ
同じジュエルオーキッドの中でも、複数種類が存在しています。園芸用として最も流通しているのはマコデス属。その他、アネクトキルス属、ドッシニア属、シュスラン属など、葉の特徴によってグループ分けがなされています。
一部の品種は、『特定国内希少野生動植物と』いうカテゴリーに指定されており、国から許可を受けた業者しか販売が出来ないことになっています。取引時には許可が必要となることもあり、手に入りにくいことから、より特別感のある植物として位置付けられているようです。
ジュエルオーキッドの花
開花時期は7月頃。花は1.5cmほどと小さく、白い色をしています。葉の存在感に比べると、質素で華奢な印象の花です。
ジュエルオーキッドの花言葉は、「日々平安」「優雅」「美しい淑女」。ビロードのような質感や色合いの葉と、つつましく可憐な花の姿にちなんだ花言葉だといわれています。
ジュエルオーキッドの育て方
適した環境
日陰で風通しがよく、安定してあたたかい場所で育ちます。生育に適した気温は25℃前後。ジュエルオーキッドは、環境の変化に敏感です。気温変化の激しい場所に置いたり、頻繁に移動したりするのは避けるようにしましょう。 自生地に近い環境をつくるため、高い空中湿度を保つことが理想的。湿度70%程を維持できる環境がベストです。高温の場所に置くと、蒸れて株が根元から溶けたように枯れることがあります。真夏は気温が高すぎる場所には置かないようにしましょう。直射日光や強すぎる西日にも当てないよう注意が必要です。
植え付けと水やり
ジュエルオーキッドは、ミズゴケで育てることができます。水をたっぷり吸わせたミズゴケを軽く絞り、根部分をやわらかく包み込むように覆います。そのまま鉢へ移し、隙間にミズゴケを適度に詰めて安定させます。鉢は、素焼き鉢よりもプラスチック製を使った方が湿度を保ちやすくなります。
水やりは、ミズゴケが乾燥してきたらあげるようにします。霧吹きなどで株全体に水を吹きかける葉水は、定期的に行いましょう。湿度が高い状態を好みますが、受け皿に水がたまった状態では根腐れを起こす可能性があります。受け皿の水は、たまっていたら捨てるようにしてください。
土を使って育てる場合は、市販の洋ラン用培養土があると便利です。
元々栄養分のあまりない環境に自生するため、基本的に肥料は必要ありません。
植え替え・株分け
植え替えを兼ねて、株分けも行うようにしましょう。適した時期は4~9月頃。真夏を避け、あたたかく過ごしやすい気候の頃に施します。
植え替えをする場合、ミズゴケや土は、新しいものに入れ替えましょう。
株分けは、葉が3枚ほど付いた状態で子株を分けます。このとき、子株にもしっかり根が生えているかを確認しましょう。植え付け同様、分けた子株をミズゴケに植えつけて鉢におさめます。株分け直後は、風通しがよく、明るい日陰となる場所で育てるようにしましょう。
ジュエルオーキッドが弱る理由
気温変化に過敏に反応するジュエルオーキッドは、低すぎる気温だとしおれやすくなります。寒い季節は、かならず室内で育てるようにしてください。一見あたたかいように感じる窓際は、夜間は冷気が伝わりやすい場所でもあるため、気温変化が起こりやすい場所です。冬場は、暖気がたまりやすい部屋の中央部分で育てるようにしてください。
また、湿度が不足すると同様にしおれます。葉が垂れるようになったら、水分不足の可能性があります。株元への水やりだけでなく、たっぷりと葉水をして様子をみてください。
まとめ
ジュエルオーキッドは、テラリウムなどの水槽環境で育てることにも向いている植物。湿度が高く、環境が変化しにくい水槽の中では、かえって安定するのかもしれません。
希少価値が高い上、あまり流通していない植物ですが、実物を見る機会があったら、葉の上に浮かび上がる独特の模様に注目してみてくださいね。