縁起のよい観葉植物として知られているオモト。鑑賞用として好まれてきた歴史は古く、広まったきっかけは江戸時代にまでさかのぼります。色褪せない葉と魅力を併せもつオモトについて、一緒に見ていきましょう。
オモトの基本情報
オモトは、日本原産の常緑多年草。葉が青々として色あせないことから、オモトには「万年青」という漢字が使われています。日本の気候や風土に合いやすく、丈夫で育てやすい性質の観葉植物です。
月日が経っても葉の色が変わらず、生命力豊かに栄えていく姿から、「開運のシンボル」とも呼ばれています。
オモトの特徴は、葉のバリエーションです。葉の長さによって、大葉種・中葉種・小葉種と、大まかに3つに分類され、その中でも斑や縞が入るもの、葉がカールしているものなど、特徴で系統が分かれています。
これらの葉の特徴は「芸」と表現され、さまざまな表情や芸を見せてくれるオモトは愛好家が多いことでも知られています。観賞価値が高く、細やかで日本的な美意識が集約された植物ともいえそうです。
オモトは控えめな花をつけます。開花時期は5~6月頃。クリーム色の小さな花が集まり、棒状に連なって咲きます。花後は赤く鮮やかな実に変わります。
花言葉は「崇高な精神」 「長寿」 「長命」。オモトの生命力や丈夫な性質に由来した言葉だといわれています。
古典園芸植物・オモト
オモトは、「古典園芸植物」の代表的植物です。古典園芸植物とは総称で、江戸時代に品種改良や育種によって大きく発展し、その後明治以降でも独自の美的基準を保ったまま栽培されつづけてきた園芸植物を指します。
オモトは元々、薬草として用いられていましたが、江戸の園芸愛好家たちの手を経て、園芸用オモトが多数誕生したルーツを持ちます。現在では1,000種を超える種類が存在しているとのことです。
オモトの観賞価値を上げるきっかけをつくったのは、徳川家康だったと伝えられています。慶長11(1606)年、拠点を江戸城に移した家康には、お祝いに様々な献上品が贈られました。献上品のひとつであった3種類のオモトを、家康は大変喜び、床の間に飾って愛でていたということです。
オモト鑑賞は大名や旗本、商人へと伝わり、一大ムーブメントに発展しました。珍しい葉芸のオモトは、現代で換算すると数千万円の価値で取引されていたといいます。庶民では手に入れることが出来ないオモトは、浮世絵にも描かれ、広く伝わっていったということです。
徳川家康の逸話から、「引越し万年青」と呼ばれる風習が生まれました。引越しの最初にオモトを運び入れることが開運につながると考えられていたのです。現代でも、オモトは門出・新生活へのお祝いの気持ちを込めて贈られる、引越しに縁深い植物という顔を持っています。
オモトの育て方
日当たりと環境
通年、風通しの良い半日陰で育てるようにしましょう。例えば、午前中のみ当たる場所などがおすすめです。耐寒性もあるため、鉢植えだけでなく、屋外や地植えでも育てることが出来ます。
強い日差しは葉焼けを招いてしまいます。育てる場所は、直射日光や、夏場の西日に当たり過ぎないところを選ぶようにしてください。耐陰性はありますが、適度に日光を浴びるとしまった株に育ちます。
水やり
土の表面が乾いてから、たっぷりあげるようにしましょう。乾いたところにたっぷりと水を与えることで、土中の古い空気を押し流す効果があります。鉢に水が行きわたり、底から水があふれてくるくらいの量が目安です。
真夏や気温の高い時期は、気温の低い朝に水やりをしましょう。日中の水やりは、土中の温度が高く蒸れるため、根が傷む原因になります。
冬場は生長がとまるため、夏に比べると水を吸い上げなくなります。鉢土は乾燥気味を心がけるようにしましょう。
用土と肥料
水はけのいい土を好みます。順応性が高いため、あまり土を選びません。市販の洋ラン用培養土や観葉植物用の土があると便利です。
肥料は、春と秋にあげるようにしましょう。置き型の緩効性肥料か、通常の2倍程度に希釈した液肥を、1~2週間に1度、水やり代わりに与えます。真夏と冬は生長がゆるやかになるため、肥料は要りません。根が肥料やけを起こすため避けるようにしてください。
きれいに育てるポイント
オモトは、1年のあいだに出す葉の数がだいたい決まっています。年間で5枚前後しか葉を出しません。
しっかり新芽を出させるために気をつけたいポイントは、適度な日光と水と肥料です。
直射日光、水のやり過ぎや水切れ、肥料のやりすぎに注意しましょう。
「適度に」というのが一番難しいですが、同じ植物でも個体差があります。様子を見つつ、変化があったら対処しやすいよう、目に入りやすい場所で育てるのも上手に育てるポイントです。
まとめ
オモトは、純和風のイメージが強い植物でもあります。脚付きのオモト専用鉢は和柄ばかりなのも関係があるかもしれません。
オモトは、葉のバリエーションが多い分、さまざまな組み合わせの可能性を秘めた観葉植物です。
従来のイメージにはとらわれず、葉の雰囲気に合わせた鉢を選んでみましょう。テラコッタや洋風の柄付き鉢など、モダンな現代版アレンジで、洋と和の絶妙バランスを楽しんでみてはいかがでしょうか。