空に向かってまっすぐ茎を伸ばし、大きな葉と葉のあいだからゆったりとつぼみを開くハス。水面いっぱいに葉と花が広がる光景は、幻想的でつい見惚れてしまう美しさをたたえています。
目を惹きつけてやまないハスには、どんな花言葉があるのでしょう。スイレンとの違いと併せてまとめてみました。
ハス(蓮)の基本情報
水面から生えるように花をつけるハスは、熱帯アジア・北アメリカやオーストラリア北部に分布する水生植物の1種です。他にレンゲ(蓮華)、イケミグサ(池見草)、スイフヨウ(水芙蓉)などの和名を持っています。
水底の土に、塊状の茎をつくり、その養分を使って茎を水面に向かって伸ばします。この塊状の茎(塊茎:かいけい)は、私たちにも馴染みのある食材・レンコンです。レンコンにある穴は、通気口のような役割を果たします。泥の中は酸素がないため、葉や茎を通して水上から地下へ空気を送り込み、循環させているのです。
ハスは花びらが散ると、花の台座のようなもの・果托(かたく)がむき出しになります。果托は、形状と穴のたくさん開いた様子から、シャワーヘッドを想像してみるとわかりやすいかもしれません。
つぶつぶの実を乗せた果托がハチの巣のように見えることから、ハチス=ハスと呼ばれるようになったといわれています。
ハス(蓮)とスイレン(睡蓮)の違い
同されやすいのが、ハスとスイレンです。
いずれも同じように水底に根を下ろし、似た葉と花をつける植物です。
ハスはスイレン科ハス属、スイレンはスイレン科スイレン属の水生植物です。属するグループの違いはありますが、共通点も多いため、間違いやすいのもうなずけます。
ハス(蓮) | スイレン(睡蓮) | |
葉の特徴 | ・茎を伸ばし、 水面から離れた空中で葉を広げる ・切れ込みがない ・光沢がない ・撥水性がある | ・水面に浮いて広がる ・切れ込みがある ・光沢がある ・撥水性がない |
花の特徴 | 葉と同様、水面より高い場所に 花をつける | 葉に並ぶように浮いて咲く |
開花時期 | ・6~8月 ・午前中(15時くらいまで) | ・5~9月 ・種類による(昼咲き・夜咲き) |
根 | レンコン | 塊根(食用不可) |
英名 | ロータス(Lotus) | ウォーターリリー(Water lily) |
印象派・モネの油彩画として知られているのは「スイレン」です。にじむ様な繊細な色使いで、切れ込みの入った葉が水面に浮かぶ様子が描かれています。
ハスは、仏教に深い関わりを持つ花です。仏様が一様に腰を下ろして座っているのは「蓮華座」と呼ばれ、ハスがモチーフとなったもの。仏教では、ハスは仏様の慈悲・智慧のシンボルとして扱われており、煩悩に惑わされず悟りを開くことを、泥の中からとても美しい花を咲かせるハスの姿に重ね合わせているということです。
余談ですが、ヨガにも蓮華座と呼ばれるポーズがあります。ロータスポーズ、パドマーサナなど、呼び名はいろいろあります。
ハスとスイレンは似たもの同士ですが、花が異なるため、つけられている花言葉も異なります。
それぞれの花言葉についても後述していきます。
ハスの花言葉
ハスの花は、早朝につぼみを開き、午後になると閉じます。咲いては閉じることを3~4日間ほどくりかえし、最後には花びらを落として散ってしまいます。ふっくらと丸みを帯びた形のつぼみが開く瞬間、「ぽん」と音を立てて咲くといわれています。早朝でなければ聞くことの出来ない、貴重な音です。
ハス全般の花言葉
ハスの持つ花言葉は、花が咲く様子に基づいたものが多くつけられています。
- 「清らかな心」……泥水の中から、美しい花を咲かせることに由来しています。
- 「神聖」 ……仏教に基づいた花言葉。お釈迦様は、生まれたばかりで立ち上がって歩くことが出来たと言われています。その足跡にハスが咲いたことから生まれた言葉だということです。
- 「休養」 ……花が朝開き、午後には閉じる習性に基づいたものとされています。
- 「離れゆく愛」……午前中のみ咲き、数日で散る花であることを指した言葉。 ハスの花期が短いことに由来しています。
色別の花言葉
ハスの花は、ピンクの花がよく知られていますが、他の色で咲く種類もあります。色によって、それぞれ花言葉がつけられています。
- ピンク……「信頼」
- 白……「純白」「純心」
- 青……「清廉潔白」
いずれも、花の色から連想される印象が花言葉になっているようです。
青いハスは、自然界にはない色ですが、仏教的な意味がある花として認知されています。
また、塊茎であるレンコンにも、「先を見通す」という花言葉があります。
穴が多く空いていることから、「向こう側が見える=見通しが良い」ことに通じるとされ、縁起物としてお正月のお節料理に用いられるきっかけになったと伝えられています。
スイレン(睡蓮)の花言葉
花姿や生育環境が似ているスイレンは、ハスに近い花言葉を持っています。
- スイレン全般……「純粋な心」「清浄」「信仰」「信頼」
- ピンク……「信頼」
- 黄色……「優しさ」「甘美」
- 白……「純粋」「潔白」
清廉で美しい花姿が似ているからでしょうか。ハスと重なる花言葉も多いですね。
自宅でも育てられるハス(蓮)
公園や大きな水辺で見られるハスですが、自宅で育ててみることも可能です。
やや手間をかける必要があり、鉢植えの植物を育てるのと感覚はかなり異なりますが、水生植物を育てるのはまた違った楽しみがあります。
水を張った鉢にハスを活け、メダカを放して、ビオトープをつくってみるのもおすすめです。自宅で花が見られる上、レンコンの収穫といった美味しさも味わえます。
まとめ
ハスにまつわる逸話は非常に多く、日本だけでなく、世界中で知られている花であることが裏付けられています。それらは、神秘的な美しさに包まれた、花そのもののような奥の深さです。