冬に開花時期を迎える花のひとつ、クリスマスローズ。清楚な花を俯き加減につける姿は、やわらかく優しい美しさをたたえています。クリスマス頃に咲き、長いもので4月頃まで花をつけてくれる植物です。クリスマスローズには、さまざまな花言葉がつけられています。由来となった特徴や背景も合わせてご紹介していきます。
クリスマスローズとは
名前にローズと含まれていますが、バラの仲間ではありません。バラ科ではなく、キンポウゲ科に分類される多年草の1種で、アネモネやクレマチス・ラナンキュラスと同じグループです。一重咲きの花姿は、アネモネの花によく似ています。
学名ではへレボルス・ニゲル(Helleborus niger)。ニゲルはクリスマスローズの原種にあたり、シンプルな白い花がよく知られています。近年は品種改良によって園芸品種が増え、半八重咲き・八重咲きなど、ボリューム感のあるクリスマスローズも人気です。白以外にピンクや黄色、紫、緑など、変わったカラーバリエーションも多くつくられています。
薬草として伝わった花
クリスマスローズは、江戸時代後期~明治時代に日本に伝わってきたといわれています。薬草として渡ってきた花でしたが、そのシンプルな咲き姿から、茶席に飾られる生け花の花材としても用いられてきたようです。「寒芍薬」「初雪おこし」といった、日本らしい雅な名前がつけられています。
はるか昔、強心剤や下剤、堕胎薬として使われていたとされるクリスマスローズ。株全体が有する強い毒性を活かし、薬草として取り入れられてきた歴史を持っています。
根や葉、花にはサポニンを始め、神経症状を起こす有毒成分があり、摂取することで下痢、呼吸麻痺、心停止を引き起こす危険性があります。クリスマスローズの学名・へレボルスは、ギリシア語「helein=殺す」「bores=食べ物」の意味。古代、生物兵器として利用された逸話が残っていることから、毒性の強さは古くから知られていたことがうかがえます。
また、クリスマスローズには鎮静効果がある他、黒い根茎には魔力が宿っているとされ、不思議な力を持った霊薬として位置付けられていたようです。
クリスマスローズの花言葉
薬効由来の花言葉
- 「慰め」
- 「いたわり」
- 「私の不安をやわらげて」
- 「安心させて」
クリスマスローズの特徴が元となった花言葉です。薬草、魔力を秘めた不思議な霊薬として使われていたことから、花に救いを求める意味合いの言葉がついたといわれています。クリスマスローズは、穢れを清め、悪霊を払う存在でもあったようです。
これら日本語の花言葉は、言い伝えの元である海外の言葉に由来しているとされています。
- 英語:relieve my anxiety(私の不安をやわらげて)
- フランス語:mettez fin à mes tourments(苦しみに終止符を)
- ドイツ語:Nimm mir meine Angst(恐怖を取り去る)
精神的・肉体的な苦しみから「逃れたい」という思いは世界共通。救われたいという願いを込めてつけられた花言葉ではないかともいわれています。
恋の逸話に基づいた花言葉
- 「私を忘れないで」
- 「追悼」
- 「思い出を懐かしむ」
古代ヨーロッパで、戦地へ向かう前の兵士が、恋人の女性にクリスマスローズの花を贈ったことに由来した言葉だといわれています。花を見つめながら、恋人は兵士の無事と期間を願ったといわれています。
その他の花言葉
- 「中傷」
- 「スキャンダル」
- フランス語:mauvaise réputation(悪い評判)
由来には諸説ある花言葉です。
毒性に基づいた言葉、呪術的なイメージから喚起された言葉だともいわれています。
白いクリスマスローズの花言葉
カラーバリエーションは20種類以上あるといわれるクリスマスローズですが、色別の明確な花言葉はないようです。唯一、白い花のみ花言葉がつけられています。
フランス語:demande en mariage(結婚の申し込み)
プロポーズの際、女性に白いクリスマスローズを渡すのがフランス流とのこと。とてもロマンチックですね。
クリスマスローズ=合格祈願
華奢な花姿や毒性の強さから一切離れたところで、なぜか『合格祈願アイテム』として注目を集めているクリスマスローズ。理由は、花の特徴に由来します。
クリスマスローズは、花びらがない花とも呼ばれています。花びらのように見える部分は、実は大きく広がったガク片。本来の花びらは小さく退化し、花芯を縁取るようについている部分になります。一般的な花は、開花してしばらく経つと花びらを散らしますが、花びらの代わりにガクを広げるクリスマスローズは散ることがありません。そのため、「ガクが落ちない=学が落ちない」というゲン担ぎから、受験生への応援を込めた合格祈願のお守りとして高い人気を誇っているのです。
冬に開花を迎えるクリスマスローズは、受験本番への追い込みにかかった学生さんを応援するプレゼントとしても市場を広げつつあります。
まとめ
同じ花でも一重咲きと八重咲きではだいぶ印象がかわるのも魅力的なクリスマスローズ。
かつては強い毒性を恐れられていたクリスマスローズですが、現在は世界中で愛される観賞価値の高い花として地位を確立しています。
冬場は、いろんなクリスマスローズが見られる絶好の機会。品種だけが持つ花言葉もあるかもしれません。鉢に刺さったネームプレートに注目です。