細くて軽い葉を、羽根のようにふわふわと茂らせるフェンネル。華奢な花が放射状に咲く様子は、手持ち花火の火花にも似たかわいらしさがあります。大型に分類されるフェンネルですが、上へ上へと伸びるため、あまり幅のとれない場所でも育てることが出来ます。ハーブ・スパイスとして広く使えるフェンネル、その育て方をご紹介します。
フェンネルの基本情報
フェンネルは、セリ科ウイキョウ属に分類される多年草のハーブです。原産地は地中海沿岸。日当たりがよく、乾燥した土壌でよく育ちます。自生地では草丈が1~2m程になる大型のハーブです。
すっきりとした強い香りが特徴的で、その香りがよく回ることからウイキョウ(茴香)の名前がついたといわれています。古代ローマで薬用として用いられてきたフェンネルは、漢方薬の1種として中国経由で日本に伝わりました。
フェンネルの開花時期は6~8月頃です。まっすぐに伸びる茎の先に、黄色くて小さな花を傘のように広げます。花言葉は「賞賛に値する」。薬効の高さを表した花言葉だといわれています。
ハーブとしての薬効
フェンネルは、からだの不調を整える常備薬代わりに、日常的に用いられてきたといいます。古来、葉は薬用、茎は食用、タネは薬に香辛料にと、余すところなく使える植物として知られていました。また、ダイエット効果があるとされていたことから、特に女性を中心に親しまれてきたということです。
- 整腸作用
- 消化促進
- 消炎効果
フェンネルは、魚料理との相性が良いことから「魚のハーブ」とも呼ばれています。独特の香りが魚の脂っぽさや生臭さを消す働きに由来しているとのこと。
フェンネルは、ブイヤベースや香草焼きの他、パンの風味付け、オリーブオイルや酢に漬けて調味料として使われています。花にはほのかに甘みがあり、エディブルフラワーとしても人気です。爽やかさの残るフェンネルシードは、クッキーなどの焼き菓子とも相性が抜群です。
フェンネルの育て方
好む環境
日当たりと風通しのいい、温暖な環境でよく育ちます。生長に適しているのは10~28℃程。耐暑性、耐寒性はさほどありません。夏場は直射日光を避けた明るい日陰で育ててあげましょう。冬になると、地上部を枯らし、根だけの状態で冬越しします。春になると新芽を出し、また大きく育ちます。
通年、過湿には注意しましょう。背が高くなるため、適宜支柱を立てるのがおすすめです。
用土と鉢
肥沃で、水はけのいい土を好みます。市販のハーブ用培養土、野菜用培養土が便利です。
フェンネルは、根がまっすぐ下に伸びます。根が弱く、植え替えにあまり向かないため、あらかじめ鉢は深めのものを使うようにしましょう。1株あたり、直径30cm、深さ30cm以上の深鉢が目安です。
植え付け
タネからも育てられますが、苗を植え付けるほうが簡単です。苗は、春先や秋によく出回ります。葉の緑が濃く、黄色く退色していないものを選びましょう。株は大きいものより小さめの方が根付きやすいです。
水やり
土の表面がしっかりと乾いたら水をたっぷりあげましょう。水のやり過ぎは多湿や根腐れを招き、株を弱らせる原因になります。夏場は水切れに注意しつつ、1日2回、株の様子を見ながら朝と夕方に水をあげましょう。冬場、地上部が枯れた後は、頻度を落として水やりを継続します。土がしっかり乾いたことを確認して、1週間に1度程度を目安に水をあげるようにしましょう。
日々のお手入れ
葉が混み合って来たら、適宜剪定をして風通しを確保しましょう。葉は、株の根元からはがすようにして刈り取ります。背丈が伸びすぎたら、30cm程まで切り戻して大丈夫です。刈り取った葉は、洗ってお料理に使ったり、入浴剤にしたりするのもおすすめです。
増やし方
根が弱いため、株分けは控えた方が安心です。増やしたい場合は、タネを蒔いて増やしましょう。発芽の適温は20℃前後です。タネは土に指で穴をあけ、まとめて10粒ほど蒔いて薄く土をかけます。芽吹いて本葉が5枚ほどになったところで、元気な株をひとつ残して他を間引きましょう。
タネの収穫
タネを使いたい場合、花が咲いても摘み取らず、そのまま残しておきます。秋~冬に茎全体を刈り取り、束ねて吊るし、乾燥させます。乾燥が進むとタネが落ちてきますので、下に新聞紙やレジャーシートを敷いておくようにしましょう。あわせて、束に紙袋をかぶせて干しておくと、散らばらずに収穫が出来ます。落ちたタネを集めて、乾燥材を入れた密閉容器に移しておくと長く保存できます。次のタネ蒔きを待ちつつ、スパイスとして日常的に使ってみましょう。
まとめ
株全体を余すところなく使えるのがフェンネルのいいところです。適温や湿度、日当たりなど、育ちやすい条件はありますが、元々順応性が高く丈夫な性質を持っています。お部屋やベランダなど、置いた場所での様子を見つつ、少しずつずらしながら育てる場所を決めてあげてもいいかもしれません。