葉に描かれる独特な迷彩模様。アグラオネマは、カモフラージュ柄や矢羽根柄など、斑(ふ)の入り方が特徴的で、その観賞価値の高さからコレクターも多い観葉植物です。なかでも、珍しいアグラオネマピクタム・トリカラーに今、注目が集まっています。この記事では、そんなアグラオネマピクタムの用土を含めた育て方や購入方法について初心者の方向けに解説していきます。
アグラオネマピクタムの基本情報
アグラオネマピクタムは、サトイモ科アグラオネマ属に入る常緑多年草の総称です。
一般的に流通しているアグラオネマは園芸種と呼ばれる育成が比較的容易なものが多いですが、アグラオネマピクタムは原種と呼ばれ初心者の方にとっては育成が難しい植物です。個体差はあるものの成長速度は遅く、1ヶ月に1枚葉が開くか開かないかといったところです。
アグラオネピクタムの大きな特徴として、個体それぞれ葉の模様や、色の数が異なります。葉の表面にあらわれる色の数によって、下記のように呼び方が変わります。
- 2色 … バイカラー
- 3色 … トリカラー
- 4色以上 … マルチカラー
ピクタムの仲間のうち、最も人気が高いのがトリカラー(3色)です。
アグラオネマピクタムが自生している産地としては、インドネシアのスマトラ島やニアス島、インド東部のアンダマン諸島などが有名で、名前にも地名がつけられています。
斑の色は白・黄緑・濃い緑が多いですが、白が混じらず緑の濃淡に分かれた3色展開の個体や銀がはっきりと入る個体もあります。下記はアグラオネマピクタムを代表する個体となります。
アグラオネマピクタム エウレカ
細長いシャープな葉に、きれいなカモフラージュ柄が散らばるアグラオネマピクタム エウレカ。
インドネシアのニアス島で採取される品種です。「エウレカ」「エウレカタイプ」と称されることがありますが、いずれも特徴は同じものです。
アグラオネマピクタム ニルバーシュ
エウレカと並ぶ人気種アグラオネマピクタム ニルバーシュ。葉の形はやや短く丸みを帯びています。葉の中心部分は白く、外側に向かって濃淡の緑が模様のようにちりばめられています。
元々自生していた場所は、開発によってなくなってしまい、流通しているのは増やされたもののみとなっているようです。
アグラオネマ アンダマン
日本のアグラオネマピクタムの火付け役として、非常に人気があるのがアンダマン諸島原産のアグラオネマピクタム アンダマン。
葉脈に沿った形では斑が入らず、葉いっぱいに白・黄緑・濃い緑がモザイク状に広がります。株によって斑の出方は変わるものの、3色のバランスにあまり偏りがないものが多いです。
流通量が少ないため、商品価値が非常に高く、入手しづらいといわれています。
アグラオネマピクタムの育て方
日当たり
アグラオネマピクタムは、熱帯地域の日陰に自生している植物で日陰とジメジメとした高温多湿の環境を好みます。
育てる際は、明るい日陰~半日陰の場所に鉢を置くようにしましょう。耐陰性が強いため、室内の暗い場所でも育ちますが、アクアリウム用の育成ライトを1日5~7時間程度照射すると一層葉の模様が綺麗に育ちます。
強い直射日光に長時間当たると葉焼けを起こし、葉が傷みますので管理にはくれぐれも注意しましょう。
温度
生育に適しているのは22~31℃くらいです。高温には強いですが、真夏は風通しのいい場所で熱がこもらないようにしてあげます。夜でも30℃を下回らない熱帯夜は、高温障害で葉が溶ける可能性があります。
耐寒性はなく、気温が10℃を下回ると枯れてしまう恐れがあります。温度変化の起こりやすい窓際に置くのは避け、新聞紙や緩衝材でくるんだり、段ボールをかぶせるなど、鉢をなるべく保温してあげるのがいいでしょう。
日本の多くの趣味家の方々は保湿・保温の観点から、下記のエーハイム レプタイルケージで、アグラオネマピクタムを育成することが多いです。常湿で育成することも不可能ではありませんが、より綺麗に育てるという点や越冬するという点においては、多湿環境を整えてあげることが好ましいといえるでしょう。
湿度
アグラオネマピクタムを育成するにあたり、非常に大切なのが湿度です。自生地は日の光が射さないジメジメとしたジャングルです。そのためには、しっかりと湿度を保ち、管理する必要があります。
霧吹きで葉水をしてあげましょう。表だけでなく、葉の裏側にも湿り気を保つようにすると、ハダニなどの害虫予防にも効果的です。
乾燥しやすい冬場は、室内に加湿器を置き、暖房器具のそばやエアコンの風が当たる場所を避けるようにしてください。
アグラオネマピクタムは乾燥しすぎると、下葉が黄変したり、葉が垂れたりします。通年、極度の乾燥には注意が必要です。しっかりと湿度を把握するためにも、下記のような湿度計を使用するとよいでしょう。
用土
アグラオネマピクタムの用土は水苔、もしくは赤玉土+鹿沼土をベースに日向土やパーライトなどの混ぜるのがおすすめです。水苔を使用する場合は製品ごとにグレードがあり、AAA以上のグレードのものが推奨されますが、現在コロナウイルス感染拡大などの影響を受け、AAA以上の水苔は入手することが非常に難しくなっています。
土を使用する場合は、なるべく粒の崩れにくい硬質の赤玉土を基本とし、鹿沼土をブレンドするようにしましょう。また、根の張りをよくするために、小粒をベースとし、中粒の赤玉土や鹿沼土を混ぜると良いでしょう。くれぐれも粒が崩れやすい土は使用しないようにしましょう。
水苔で育成する場合や、赤玉土や鹿沼土を使用して育成する場合でも、アグラオネマピクタムは根に酸素を供給してあげることが非常に重要です。
アグラオネマピクタムは調子を崩してしまうと、幹や根が溶けたり、葉が垂れる、葉先が黄変するなどの症状が出ます。もしそのような症状が見られたら、根や幹に何かしらの問題が生じている可能性が高いです。そうならないよう、用土の中の状態には細心の注意を払いましょう。
水やり
アグラオネマピクタムの水やりは土の表面が乾いたら、鉢底から水があふれるまでたっぷりと水をあげるようにしましょう。
多湿環境であれば頻繁な水やりは不要です。水切れを恐れて頻繁に水をあげてしまうと、根がふやけた半透明のような状態になってしまいます。常湿環境で育成する場合も同様に土の表面がしっかりと乾いてから水やりをしましょう。
冬は休眠期となり、土からの吸水がゆるやかになります。土は乾かし気味に管理し、土の表面がしっかり乾いてから水をあげましょう。
肥料
アグラオネマピクタムの肥料については、株を土に植え込む際に緩効性肥料のマグァンプKを、液体肥料を月に1回程度与えるのが良いでしょう。液体肥料はパッケージに記載されている割合より薄めの倍率で与えましょう。頻繁に液体肥料を与えてしまうと、葉が肥料焼けしたり、葉が肥大化し葉形がいびつになります。
害虫対策
アグラオネマピクタムの害虫対策としては葉水がおすすめです。その際は葉水を与えるだけでなく、葉の付け根にカイガラムシがいないか、葉の裏側にハダニがいないかも併せて確認するようにしましょう。もし、カイガラムシやハダニがいるようなら下記のようなスプレーを用いて早急に駆除しましょう。
鉢
アグラオネマピクタムを植える鉢は根に、しっかりと酸素を供給することのできるスリット鉢がおすすめです。
また、アグラオネマピクタムを育成する上で、根の状態が株の調子を分けるといっても過言ではありません。ですので、根の状態を一目でチェックすることのできる下記のような半透明のプラスチック鉢もおすすめです。
アグラオネマピクタムの増やし方
アグラオネマピクタムは、写真のように取り木で株分けをすることが出来ます。
幹の周りをカットしたペットボトルや、プラスチックのコップなどで囲み、水苔や土を詰めます。すると、2ヵ月ほどで幹からの発根を確認できるので、そこから下をカッターなどで切れば、アグラオネマピクタムを増殖させることができます。
アグラオネマピクタムは雑菌に弱い植物なので、幹をカッターで切る際には葉先を火で炙るなどの殺菌を心掛けてください。
アグラオネマピクタムは採取者によって便名や個体名が分類される
アグラオネマピクタムは個体によって模様が異なるため、採取者によって便名や採取した年月や地域でコードを振り分け、購入者が個体を識別できるようタグを付け販売しています。ここでは代表的な3便と、採取されたアグラオネマピクタムの中でも模様が素晴らしいとされ名を付与されたネームド株をご紹介いたします。
アグラオネマピクタムは、インドネシアのアチェ州や南スマトラ州といった地域によって模様が大きく異なるため、自分の好みのアグラオネマピクタムを集めていくのも育成する楽しみの1つといえるでしょう。
- LA便
氷柱錦・天照・柳緑花紅・氷肌玉骨 - AZ便
エウレカ・ニルヴァーシュ・ラプラス・ファントム - TB便
CWモザイク・メサイア・コメットテール・フロスティ
アグラオネマピクタムの購入方法
アグラオネマピクタムは一般的なフラワーショップなどでは販売しておらず、イベントや通信販売(主にアクアリウムショップ)、オークションサイト、フリマサイト、お店によってはホームセンターなどでも購入することになるでしょう。
アグラオネマピクタムがどのようなイベントで販売されるのか、また、どのようなサイトで購入することができるのかを下記でまとめました。これからアグラオネマを育ててみたいという方はぜひ参考にしてください。
- BORDER BREAK
- 天下一植物界
- 草わるん
- アクアリウムバス
- サンシャインシティ 世界のらん展
※いずれも抽選での販売になる可能性が高いです。
※常時販売しているわけではありませんのでご注意ください。
まとめ
アグラオネマピクタムは、希少価値が高い分、なかなか実物を見る機会がない植物かもしれません。見れば納得、底なしの美しさです。
もし、アグラオネマピクタムを購入を検討されているようでしたら、しっかりと育成環境を整えてから購入するようにしましょう。それらの多くは、植物採取家の方々がインドネシアやインドまで出向き、採取し日本に持ち帰った植物たちです。そのような背景に思いをはせ、魅惑の迷彩柄アグラオネマピクタムを楽しみましょう!