3月、寒さがゆるむとつぼみを開き始める小さな花・スミレ。春を告げる使者とうたわれ、日本に限らず世界中で愛されている花です。
この記事では、スミレの持つ花言葉や名前、その由来についてまとめてみました。
スミレが持つ花言葉たち
スミレは、日本だけでも60種類前後が自生する他、改良された園芸品種も含めると100を超える種類があります。
種類全般に共通する花言葉は、「誠実」「謙虚」「小さな幸せ」です。英語の花言葉も「faithfulness(誠実)」「modesty(謙虚)」が共通しています。
針金のように細い茎の上に直径2cmほどの花をひとつつけるスミレ。他の草にまぎれそうな中で埋もれまいと首を伸ばし、咲いていることを主張します。スミレの花言葉は、慎ましく控えめな花姿に由来したものだといわれています。
スミレには、色ごとに花言葉があります。
どの花言葉も、咲き姿と色のイメージからつけられたものが多いように推測されます。
紫のスミレ
日本の花言葉 …「貞節」「愛」
西洋の花言葉 …「daydreaming(白昼夢)」「You occupy my thoughts(あなたのことで頭がいっぱい)」
白いスミレ
日本の花言葉 …「純潔」「あどけない恋」「無邪気な恋」
西洋の花言葉 …「innocence(純潔)」「candor(率直)」
黄色いスミレ
日本の花言葉 …「田園の幸福」「つつましい喜び」
西洋の花言葉 …「rural happiness(田園の幸福)」
花の名前の由来
スミレは総称して“スミレ(菫)”とされていますが、元々は日本に自生する野草です。スミレの名前は、大工さんが直線を引く際に使っていた道具・墨入れ(墨壺)に由来するといわれています。墨を入れる部分が湾曲した墨入れは、スミレの花首部分の形とたしかに似ています。
また、スミレの“スミ”は“摘み”が変化したものという説もあり、花を摘んで楽しむ花だったことからスミレの名がついたともいわれています。
スミレ・パンジー・ビオラの違い
スミレとよく似た花で、パンジーやビオラがあります。販売されている名前でも混同しがちですが、わかりにくいのには理由がありました。
スミレ=日本で自生するスミレ
学名がビオラ マンジュリカ(Viola mandshurica)であることから、“マンジュリカ”と呼ばれて区別されることも。花はラッパのような形をしていて、花びらが小さく、細めの楕円形をしています。
パンジー=ヨーロッパ・北米原産のスミレからつくられたもの
野生のスミレをいくつもかけあわせてつくられたのがパンジーです。和名では三色スミレ(さんしきすみれ)と呼ばれています。花びらが広く丸みを帯びていて、花の直径が5cm以上のものを指します。
パンジー全般に共通する花言葉は、「もの思い」「私を思って」。英語での花言葉は、「think of me(私を思って)」「memories(思い出)」「merriment(陽気さ)」です。
ビオラ=ヨーロッパ・北米原産のスミレがベース・パンジーの改良版
パンジーとビオラの元は、ヨーロッパ・北米原産のスミレである部分は同じです。パンジーに比べ、花が小さいのが特徴です。花の直径が4cm以下のものがビオラといわれています。
ビオラの花言葉は「誠実」「信頼」「忠実」「少女の恋」。うつむきがちに咲く姿が、思いつめた少女のように見えることから、「私のことを想ってください」という花言葉も持っています。
交配されたベースが同じだったため、見た目や名前での区別がつきにくくなっているようです。
現在も品種改良は進んでいて、花の直径だけでは区別しにくい品種が多くなっています。基本的な育て方や性質は変わらないため、名前にはさほどこだわらなくてもいいのかもしれません。
女性の美しさを称える花たち
日本では、美しい女性を形容する言葉で、「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」という表現がありました。容姿だけでなく、立ち居振る舞いがきれいな様子を、3種類の花を用いて言い表したものです。
西洋でも似た表現があり、3つの花の花言葉で理想の女性の性質を挙げています。いずれも、聖母マリアに捧げる代表として扱われている花です。
- バラ …「美(beauty)」
- ユリ …「威厳(majesty)」
- スミレ …「謙虚(modesty)」「誠実(faithfulness)」
惚れ薬アイテム・スミレ
ウィリアム・シェイクスピアの有名な喜劇、『夏の夜の夢』で、スミレはキーアイテムとして登場します。
舞台は真夏の夜の森の中。仲たがいをする妖精の王と女王、恋人たちと彼らに片思いをする若者たち。画策を図る王は、愛の妙薬を使ったある計画を妖精パックに託します。花の汁でつくられた妙薬は惚れ薬。閉じたまぶたに塗れば、次に目覚めたものに恋をしてしまう効果のあるものでした。
いたずら好きな妖精パックは、この薬を間違えた相手に使ってしまいます。そのため、森の恋人たちの恋愛模様はこんがらがり、他の妖精たちや街の職人たちを巻き込んだ大騒動に発展していく茶番劇です。
妖精パックが使った愛の妙薬は、絞った三色スミレの汁でした。当時はまたパンジーが生まれていなかったため、野生のスミレだったといわれています。
まとめ
スミレは、原種のままでも改良されたものでも変わらず、咲き姿が可愛らしいものばかりです。
公園を散歩するとき、ハイキングに行くとき、足元にも注目してみてください。目に入っていないだけで、意外なところに咲いているのを見つけることが出来ますよ。