秋の到来を伝えてくれる花のひとつ、キンモクセイ。風に乗って甘い香りが漂ってくると、知っている香りだと感じる方も多いかもしれません。身近で馴染みのあるキンモクセイの花には、どのような花言葉が込められているのでしょうか。
キンモクセイ(金木犀)の基本情報
キンモクセイは、中国原産の常緑高木です。10月前後に開花し、鮮やかなオレンジ色の小花を枝いっぱいに咲かせます。花が楽しめるのは開花して1週間ほど。咲いている姿も可愛らしいですが、花がたくさん散ったあとの地面も、積もった花が天然の絨毯のようでとてもきれいです。
甘くて強い芳香が特徴的なキンモクセイは、ジンジョウゲ・クチナシと共に「三大香木」に数えられています。
他に、モクセイカ(木犀花)、タンケイ(丹桂)、ケイカ(桂花)という別名があります。
香りのもつイメージ
かつて、キンモクセイはその強い香りを使って、消臭目的で使われていた花でした。そのイメージから、お手洗いを連想される方もいらっしゃるかもしれません。
時代は変わり、今やキンモクセイはアロマや香水としても広く知られ、人気を誇る香りになりました。ラベンダーやサンダルウッド同様、高い鎮静作用とリラックス効果があることも認められています。
キンモクセイの花言葉
謙遜
強い香りを放つキンモクセイの花ですが、ひとつひとつはとても小さい花です。4枚の花びらを持つ小花が、枝先でぎゅっと身を寄せるように集まって咲きます。
「謙遜」は、花が小さく控えめな様子からつけられた花言葉だといわれています。
気高い人
キンモクセイの開花時期は短い上、風や雨に当たってあっさりと散ってしまいます。未練を残さない散り際の潔さに由来して、花言葉が生まれたようです。
また、かぐわしい香りが上品で高貴なイメージを連想させるため、という解釈もあります。
真実
花が小さくても、香りははるか遠くまで届くキンモクセイ。どこかはわからなくても、香りでキンモクセイが咲いていることがすぐにわかります。「咲いていることを隠せない=嘘がつけない」ということからつけられた花言葉だといわれています。
変わらぬ魅力
キンモクセイは毎年変わらずに咲き誇り、変わらない香りを運んでくれます。何年経っても変わらない花のすばらしさにちなんだ花言葉だということです。
隠世(かくりよ)
隠世=死後の世界を指す言葉です。キンモクセイの強い香りには特別な力があるとされ、あの世とこの世を繋げると信じられていたことに由来します。かつて、キンモクセイは邪気を払う魔除けとして、お寺や神社に植えられることも多かったとのこと。金色の花が太陽を連想させるため、闇を払う縁起物とする見方もあります。
誘惑、陶酔
花の持つ独特の香りに由来した花言葉です。思わず惑わされてしまうほどの魅力的な香りから、これらの花言葉はつけられたといいます。昼より夜の方が強く香ることも関係しているのかもしれません。
キンモクセイは、香りを活かしたお茶やお酒も有名です。キンモクセイを白ワインに漬けこんだ桂花陳酒(けいかちんしゅ)は、甘みが強く上品な香りで、傾国の美女・楊貴妃が好んだお酒だと伝えられています。桂花陳酒がベースになったカクテル“楊貴妃”も、さまざまなアレンジで楽しまれています。
キンモクセイとギンモクセイ
金があれば銀もある。キンモクセイの仲間に、ギンモクセイ(銀木犀)という木があります。どちらもモクセイ科モクセイ属に分類される花木です。開花時期もほぼ同じですが、花色が異なります。
キンモクセイは、オレンジ色のごく小さな花が集まって毬状に咲きますが、ギンモクセイの花は白です。一枝につく花の数はキンモクセイにくらべると少なく、色味も相まって、より慎ましやかな印象を受けます。
香りの強さにも違いがあります。ギンモクセイも甘い香りで咲きますが、キンモクセイよりも香りが弱く控えめです。
ちなみに、名前についた“犀”は、動物のサイのこと。武骨な樹皮の様子がサイの皮膚に似ている様子から、この字が使われています。モクセイの木は硬く、カトラリーや小物、家具など、木材として利用されることもあるようです。
ギンモクセイは、モクセイ属の原種。キンモクセイは、ギンモクセイから派生した変種にあたります。
園芸業界では、モクセイ(木犀)=ギンモクセイを指すようですが、キンモクセイの方が一般的な認知度は高く、よく知られています。
ギンモクセイの花言葉は、「初恋」「あなたの気を引く」。
「初恋」は、ギンモクセイの白く小さな花の可憐な花姿から。
「あなたの気を引く」は、中国に伝わる古い習慣に由来するといわれています。好きな人に会う前、ギンモクセイ入りのお酒を含んで香水変わりに漂わせたことにちなんだ言葉だといわれています。
まとめ
キンモクセイの花は本当に不思議です。あんなに小さな花から、どうしてあれほど強い香りが生まれるのでしょうね。古来より、記憶と共に、人々に刻まれ続けてきた香り。キンモクセイにまつわる逸話は、まだまだ世界中に散らばっているのかもしれません。