熱帯植物の1種、ローゼル。ハイビスカスによく似た花をつける植物で、タチアオイやムクゲ・スイフヨウと同じグループに属する仲間です。ローゼルは、観賞用だけではなく、食用としての側面でよく知られている植物です。今回は、ローゼルの特徴と、その育て方についてご紹介します。
ローゼルの基本情報
ローゼルは、アオイ科フヨウ属に分類される多年草です。原産地は熱帯アフリカ。草丈は1~2m程と、比較的背が高い植物で、熱帯~亜熱帯にかけて、世界中で広く栽培されています。和名ではベニアオイ(紅葵)。寒さに弱く、越冬が難しいとされていることから、日本では1年草として扱われています。
5枚の花びらで構成される花はハイビスカスの花姿に似ていますが、ごく淡い黄色やピンク色で咲くため、やや控えめで落ち着いた印象です。
特徴的なのは、ルビーレッドに色づく果実です。ラズベリーに似た2cm前後の深い赤色の実と、それを包むように広がるガクは、観賞用の花材として用いられるだけでなく、食用としても広く使われています。特に有名なのはハイビスカスティーの原料。ローゼルは、ハイビスカスの原種ともいわれています。ハイビスカスティーの鮮やかな赤と酸味は、ローゼルの持つ特徴を上手に生かしたものです。
ローゼルの花期は9~11月。花は半日程で萎れてしまうものの、次々と新しく開花することから、「常に新しい美」という花言葉を持っています。
ローゼルの育て方
日当たりと環境
日中はよく日の当たる場所で育てましょう。たっぷりと日の光を浴びることで、たくさんの花をつける株に育ちます。暑さには強いですが、耐寒性はありません。霜の下りない地域であれば地植えでも育ちますが、場所を移せる鉢植えで管理する方が育てやすいです。
ローゼルは、昼の長さが短くなったことを察知して開花の準備をする短日植物です。夜間に街灯や照明の当たる場所で育てると、花芽が付かないことがあります。
生長すると草丈が大きくなります。丈に合わせて、支柱を立ててあげると安定します。
連作障害に注意
1年草扱いですが、タネ蒔きをすることで毎年育てることが出来ます。ローゼルは、連作障害(同じ場所やプランターで育てると生長不良を起こすこと)が起きやすい植物だといわれています。植える場合は、昨年と異なる場所を選ぶようにしましょう。プランターや鉢植えの場合は、新しい土に替えてからタネを蒔くようにしてください。
水やり
土が乾いてからたっぷりとあげるようにしましょう。水やりはメリハリを意識し、「たっぷりあげて、しっかり乾くまで控える」をくりかえすことで、根がしっかり張った株に育ちます。極端な水切れを起こすと、葉が黄色く変色したり落ちたりすることがあります。土の乾き具合だけでなく、株の様子を見ながら水分を与えるようにしてください。
地植えで育てる場合は、自然の降雨で育ちます。雨が少なく、土が乾きすぎるようであれば適宜水をあげるようにしましょう。
用土
水はけのいい環境でよく育ちます。市販の草花用培養土は、そのまま使えて便利です。または、赤玉土と腐葉土を6:4くらいの割合で混ぜて使いましょう。
ローゼルの収穫
10月前後が開花シーズンです。花がしおれ、苞やガクが閉じると、イチゴのような実がつくられます。赤い果実がふくらんできた頃が摘み時です。ぎざぎざのガクのすぐ下にハサミを入れて収穫しましょう。
タネを採取する場合は、開花後2ヵ月前後は実を摘み取らず、枯れる直前まで残しておくようにしてください。実が充分に熟すのを待ち、成熟したタネをつくることで、発芽の成功率が高いタネになります。実をしっかり乾燥させたあと、中からタネを取り出しましょう。集めたタネは、密閉できるビンなどに入れて、タネを蒔く季節まで涼しい場所で保管しておきます。
タネ蒔き
蒔くのに適した時期は4~5月。20℃前後の安定した気温で発芽します。早めに蒔き、発芽までは室内で栽培するのもおすすめです。
タネ蒔きは、タネが隠れる程度にうすく土をかけましょう。水はタネが流れないようにそっとあげ、湿り気を保つようにして管理します。蒔いた後、1~2週間ほどの目安で発芽します。タネはポットに蒔き、発芽後はプランターや鉢植えに移すようにしましょう。
収穫後の果実を利用
食用として利用できるのは、赤く色付いた苞やガクの部分です。フレッシュでも、乾燥させた状態でも使えるので便利です。
果実は、収穫後水で丸洗いし、タネを取り除きましょう。実の部分を千切りにして、熱湯を注ぐだけでフレッシュなハイビスカスティーが楽しめます。果実1個=カップ1杯分の目安。酸味が強い場合は、はちみつを加えるとまろやかな風味に変わります。
千切り後、天日干しや電子レンジにかけて乾燥させておくと、長期保存も可能です。乾燥材を入れた密閉容器に保存すると、1年中使えるので重宝します。
まとめ
ビタミンCやクエン酸など、たくさんの栄養成分が摂れるハイビスカスティー。透明感のある鮮やかな赤は、花びらの色ではなく、果実の色だったことにも驚きです。
秋に見られる花も、ルビーレッドの実も、いずれも特徴的で見どころがあるローゼル。タネから蒔いて育てることで、生長過程をたっぷりながめることが出来ます。収穫までの楽しみがさらに増してくれそうですね。