桜のつぼみがほころび、枝に薄いピンク色の花が見え始めると、春が来たなと嬉しくなりますよね。寒かった長い冬が終わることが感じられ、少しほっとする心持ちになります。
日本の国花でもある桜には、どのような花言葉があるのでしょうか。
桜が持つ花言葉
日本に咲く桜には、いくつもの種類がありますが、すべての桜に共通して「純潔」「精神美」「優美な女性」という花言葉がつけられています。解釈や由来はさまざまですが、花の美しさから喚起されたイメージが元になっているようです。
「精神美」は、国花である桜に、日本人の理想とする心や品格を投影したものと位置付けられています。冬の寒さを乗り越え花を咲かせる力強さ、散り際の潔さ、また必ず花をつける粘り強さ。美徳とされる性質を象徴した花言葉ともいわれています。
種類別・桜の花言葉
ソメイヨシノ(染井吉野)
代表的な鑑賞用桜として最も知られているのがソメイヨシノ。国内に咲く桜の約80%を占めています。開花宣言の元となる標準木が全国に60本ほどありますが、その内のほとんどがソメイヨシノです。
染井村(現在の東京都豊島区駒込)の植木職が品種改良に成功したのが、ソメイヨシノの始まりだと伝えられています。名前は、染井村と桜の名所・吉野村をかけあわせてつけられたとのこと。
ソメイヨシノの花言葉は、「高貴」「清純」「精神愛」「優れた美人」です。
ヤエザクラ(八重桜)
ソメイヨシノから2週間前後遅れて見頃を迎えるのがヤエザクラ。花びらが幾重にも重なり、ボリュームのある球状の花をたくさんつけます。ソメイヨシノのはかなさと対照的などっしりとした花は、少しバラにも似た豪華さがあります。
ヤエザクラの花言葉は、「豊かな教養」「善良な教育」「理知に富んだ教育」。満開の時期が入学・卒業シーズンと重なることから、教育にちなんだ言葉がつけられたといわれています。
シダレザクラ(枝垂桜)
長く伸びた枝がやわらかく垂れさがるシダレザクラ。ベニシダレ(紅枝垂)、ヤエベニシダレ(八重紅枝垂)、キヨスミシダレ(清澄枝垂)など、花のつき方が異なる仲間もいます。福島県三春町に咲くベニシダレザクラは樹齢1,000年を超え、国の天然記念物として大切に管理されています。
シダレザクラの花言葉には、「ごまかし」という言葉があります。うつむいて花をつける様子が自分を偽っているように見えることから、この花言葉がついたようです。他には「優美」「円熟した美人」の花言葉がつけられています。
ヤマザクラ(山桜)
小ぶりの花を無数につけるヤマザクラ。日本に古くから自生する代表的な桜でもあります。ソメイヨシノは花が散ってから若葉が茂りますが、ヤマザクラは花と共に葉をつけるという違いがあります。古来、和歌にたびたび登場していた桜はヤマザクラでした。
ヤマザクラの花言葉は、「高尚」「美麗」「あなたに微笑む」。控えめで派手さはありませんが、白い花が枝いっぱいに咲き誇る様子がとても美しい桜です。
桜をめぐる歴史
桜は、日本最古の歴史書「古事記」から登場します。桜は、女神・コノハナサクヤヒメ(木花開耶姫)が富士山の上空から花の種をまいたのが始まりだったと伝えられています。桜の名前の由来には諸説ありますが、コノハナサクヤヒメの「サクヤ」からつけられたといわれています。
お花見の文化が始まったのは奈良時代。遣唐使によって中国を行き来し、外交によって中国文化が流入した際、一緒に渡ってきたのが梅でした。当時のお花見といえば梅。桜もありましたが、梅が圧倒的に人気だったようです。和歌を集めた万葉集にも、梅の歌が数多く収録されており、貴族を中心に梅が愛されていたことが窺えます。
花見の対象が梅から桜に移っていったのが平安時代。天皇への献上品として、桜が献上されるようになり、それを機に天皇主催の年中行事として、桜を愛でる花見に発展していったと伝えられています。
ピンク・白・緑のお花見団子が生まれたのは鎌倉以降です。ピンクは桜、白は雪、緑色はよもぎ。3色で春・冬・夏を表現しているのは、秋がない=飽きが来ないにかけられているそうです。
一般庶民にも花見文化が定着したのは江戸時代以降です。桜の名所として有名な隅田川に桜を植えたのは、8代将軍の徳川吉宗でした。大雨による河川氾濫を防ぐため、川沿いに堤防代わりに桜を植えたところ、多くの人が集まるようになり、お花見の文化が広がるきっかけになったといわれています。
西洋の花言葉
日本からの寄贈や移植がきっかけとなり、桜の名所は今や日本だけにとどまりません。アメリカのワシントンやニューヨーク・カナダ・中国・スウェーデン・トルコなど、海外でも桜は人気です。咲いた桜を見上げることで春の訪れを嬉しく思う。同じ感性の仲間が世界中にいるのは、とても素敵なことですね。
英語での桜の花言葉は、
- spiritual beauty(スピリチュアル ビューティー:精神の美)
- a good education(ア グッド エデュケーション:優れた教育)
です。
アメリカ初代大統領のジョージ・ワシントン氏の幼少期に由来する花言葉だといわれています。お父さんが大切にしていた桜を誤って切ってしまい、それを正直に告げたところ、正直さを褒められた、という話が元になっているようです。
まとめ
私たちが春に眺めている桜には、花言葉にのせたいろいろな思いが込められています。
桜には、樹齢が長いものも少なくありません。桜の花はどんな歴史を見つめ、人々を見守りつづけ、いまここで咲いているのでしょう。見たことのない昔に思いを馳せながらするお花見も、またいいものかもしれません。