「福」と「寿」。縁起の良い字面の名前を持つフクジュソウ。いかにも日本らしい花名ですが、それもそのはず、フクジュソウは日本原産の植物。江戸時代の頃から正月飾りに用いられてきたともいわれ、現在も新年の季語としても使われる春の花です。古来、おめでたい日に飾られてきたフクジュソウには、どのような花言葉がつけられているのでしょうか。
フクジュソウとは?
早春に黄色い花を咲かせるフクジュソウは、キンポウゲ科に分類される多年草です。北海道〜本州の山野に広く自生しています。
江戸時代、一番に春を告げるという意味合いから、「フクツグソウ(福告ぐ草)」という花名がつけられました。以降、語呂がよくなるよう「寿」へと差し替えられ、「フクジュソウ(福寿草)」に転じたといわれています。
開花は2〜4月。30cm前後の草丈で、明るい黄色の花をつけます。旧暦の新年にあたる時期に咲き始めることから、元日草(がんじつそう)、朔日草(ついたちそう)の別名も持っています。
縁起の良い名前を持つため、新年を祝う花としてもよく知られています。
フクジュソウの花言葉
全般の花言葉
「幸せを招く」「永久の幸福」
フクジュソウは、「幸福」と「長寿」を意味した名前だといわれています。花言葉は、フクジュソウが古来、縁起の良い花として大切にされてきたことに由来しているようです。
その他、「祝福」「希望」「極限の愛」といったあたたかい花言葉も持ち合わせています。
英語の花言葉
「sorrowful remembrance(悲しき思い出)」
明るい花言葉を持つ一方で、フクジュソウには「悲しき思い出」という言葉もつけられています。
フクジュソウは、英名で“Amur adonis(アムール アドニス)”。悲しい花言葉は、ギリシャ神話に登場する美少年・アドニスが由来だといわれています。
愛と美の女神・アフロディーテが、息子のキューピッドと遊んでいるとき、誤ってキューピッドの射た愛の矢が、アフロディーテの胸に刺さってしまいます。直後、美少年アドニスに出会い、アフロディーテは彼を強く愛するようになりました。
ある日、狩り好きなアドニスは、イノシシに突かれて命を落としてしまいます。悲しんだアフロディーテのこぼした涙のもとに、血のように赤いフクジュソウ(アネモネ)が咲きました。アフロディーテは、この花に「アドニス」と名前をつけて愛したということです。
キンポウゲ科の花言葉
フクジュソウと同じキンポウゲ科には、切り花や鉢植えとしてもなじみのある植物が複数属しています。
アネモネ
花言葉:「純情無垢」「無邪気」「可能性」
開花時期:2~5月頃
カラーバリエーション:赤・ピンク・白・紫・青
鮮やかな発色と、ひらひらと花びらを広げる様子が可憐なアネモネ。春のあたたかい風が心地いい時期に咲くことから、“風の花”という別名を持ちます。
アネモネのあかるい花姿の印象から、さまざまな花言葉がついたといわれています。
クリスマスローズ
花言葉:「なぐさめ」「いたわり」「私を忘れないで」
開花時期:12~4月
カラーバリエーション:白・ピンク・黄色・紫・緑
ややうつむきがちに美しい花をつけるクリスマスローズ。寒さに強く、咲く花が少ない冬の時期に開花シーズンを迎えることから、園芸愛好家に人気のある多年草です。古来、薬草として使われていた歴史を持つクリスマスローズは、高い薬効に由来した花言葉が多くつけられています。
ラナンキュラス
花言葉:「とても魅力的」「晴れやかな魅力」「光輝を放つ」
開花時期:4~5月
カラーバリエーション:赤・白・ピンク・オレンジ・紫
切り花としてもよく知られているラナンキュラス。幾重にも花びらを重ねて咲く花姿はゴージャスな印象で、1輪でも存在感が抜群です。ラナンキュラスの花言葉は、鮮やかな色合いの花びらやなめらかな質感から連想されたものだといわれています。
クレマチス
花言葉:「精神の美」「旅人の喜び」
開花時期:4~10月
カラーバリエーション:白・ピンク・黄・青
“つる性植物の女王”の異名を持つクレマチス。花名は、ギリシア語の『klema=ブドウなどのつる』が語源だといわれています。華奢なつるを伸ばし、大きな花をつけることから「精神の美」という花言葉がつけられたといいます。「旅人の喜び」は、宿屋の玄関にクレマチスを植え、旅人を優しく迎え入れたという、ヨーロッパでの古い習わしから生まれた花言葉だということです。
まとめ
おめでたく、縁起の良い印象を全身にまとったフクジュソウ。冬に赤い実をつけるナンテンと組み合わせることで、「災い転じて福となす」という、遊び心のあるゲン担ぎにも取り入れられてきたといいます。
不老長寿を意味するマツ、「富」「財産」「慶祝」などの花言葉を持つセンリョウ(千両)やマンリョウ(万両)など、他の植物を合わせた正月飾りでも、フクジュソウは彩りを添えてきました。
今のように、園芸品種の少なかった江戸時代、あかるい黄色の花をつけるフクジュソウは、どれほど人々の目を惹きつけたのでしょう。素朴な花ながら、つい思いを馳せたくなるような魅力がフクジュソウにはあります。