早春を告げる花・梅。梅の花と日本との関わりは古く、今から1300年程前の奈良時代までさかのぼります。万葉集にも、梅の花について読んだ句が多く残されています。春告草(ハルツゲグサ)、風待草(カゼマチグサ)、香散見草(カザミグサ)。風流な別名も多くもっている花です。私たちが生まれる遥か前から愛されてきた梅には、どのような花言葉やエピソードがあるのでしょうか。
梅の基本情報
梅は、バラ科サクラ属に分類される落葉高木です。同様に果実のことも指します。原産地といわれているのは中国。梅は中国、台湾で国花に指定されています。日本では、国花の桜と並ぶ、代表的な春の花です。
中国語「梅(メイ)」が転訛したとされる説、薬用として伝わった実が「烏梅(ウメイ)」だったことに由来するという説、花の美しさを表す「愛目(うめ)=梅」となった説。“ウメ”の語源には、さまざまな説があります。
英名では「ジャパニーズ・アプリコット(Japanese apricot)」「プラム・ブロッサム(Plum blossom)」と呼ばれています。
現在は、お花見といえば桜ですが、古来は梅見が主流でした。お花見の文化が始まったのは奈良時代。梅は、遣唐使によって中国から持ち込まれたのがはじまりだといわれています。
新元号『令和』にも由来
2019年5月、新元号が『令和』に変わりました。
令和の由来となったのも、万葉集収録の梅花の歌。梅の花が咲いたことによる春の訪れ、その美しさや香りを表した歌が由来だと発表されています。
初春令月、気淑風和、梅披鏡前之粉、蘭薫珮後之香
初春の令月にして (しょしゅんのれいげつにして)
氣淑く風和ぎ (きよくかぜやわらぎ)
梅は鏡前の粉を披き (うめはきょうぜんのこをひらき)
蘭は珮後の香を薫らす (らんははいごのこうをかおらす)
<引用:万葉集 第五 梅花の歌 三十二首>
厳しい冬でも、たくましい生命力で花をつける梅にちなみ、令和の時代=明日への希望と共に、それぞれの花を大きく咲かせられるように、という願いが込められています。
松竹梅とは?
慶事や縁起物、格付けにもよく登場する『松竹梅』の表現。ここにも、梅は加えられています。
松・竹・梅は、「歳寒三友(さいかんさんゆう=寒く厳しい季節に、友とするべきもの)」と呼ばれ、東洋絵画に多く用いられるモチーフを指す言葉です。
松が最上位として使われることも多い松竹梅ですが、並び順には優劣はありません。時系列に沿って、縁起物として定着した順に並んだと伝えられています。
・松 …「常緑=不老長寿」のシンボル (平安時代)
・竹 …旺盛な生命力が「繁栄」を連想させる (室町時代)
・梅 …冬中から咲き、新春を知らせるおめでたい花 (江戸時代)
梅の花言葉
梅の開花は早くて1月頃。真冬のさなかから花をつけ、品種により4月頃まで花をつけます。花持ちは3~7日ほど。赤・ピンク・白などのカラーバリエーションがあります。
花の直径は1~3cmほど。あまり大きくは咲きませんが、一重咲きや八重咲きなど、花びらの付き方によって表情が変わります。花が咲くと、甘酸っぱく上品な香りがするのも特徴です。
梅全般の花言葉
「高貴」「高潔」「忍耐」「忠実」「忠義」
いずれも、梅の花が厳しい冬のさなかに凛々しく咲く姿に由来するといわれています。
高貴とは、身分が高いこと。高潔とは、気高く清らかなこと。
字面からみても、どことなく近寄りがたさを感じる花言葉が並びます。
「忠義」は、平安時代の貴族・菅原道真につながる花言葉です。権力闘争に敗れ、大宰府に流された道真の後を、梅の花が追いかけたとされる「飛海伝説」に由来するといわれています。
色別の花言葉
・紅梅の花言葉:「あでやかさ」「優美」
赤い梅・紅梅は、平安時代の女流作家・清少納言が愛した花とされ、随筆・枕草子にも登場しています。
紅梅の持つ女性らしい色香や上品さをたたえた美しさにちなんだ花言葉だといわれています。
・白梅の花言葉:「気品」「上品」「澄んだ心」
清楚で凛とした佇まいからつけられたと花言葉だとされています。白い梅は、満開の見頃を迎えても、奥ゆかしさと清楚さを保ち、見る人の目と心を惹きつける魅力をもっています。
・ピンク色の梅の花言葉:「清らかさ」
色あいのイメージから喚起された花言葉だといわれています。ピンク色に染まる花は少女のようで初々しい愛らしさがあります。やわらかいピンク色で咲く梅は、心がほぐれるような優しさを感じさせてくれます。
英語の花言葉
「Keep your promise(約束を守る)」「fidelity(忠実)」「beauty and longevity(美と長寿)」
まとめ
ずっと昔に生きた人たちは、植物や花々から、季節の変化を感じ取っていました。現代よりさまざまなことが不便だったとしても、冬に咲く花から春の訪れを嬉しく思うなど、感受性がとても豊かだったことがうかがい知れます。
私たちの身近にある梅ですが、どんな花なのか、改めて知ってみるのも面白そうです。